機能不全家族を克服する際に気をつけたいこと

あなたは、このようにお考えなのでしょうか。

「機能不全家族で生まれ育った。だから、生きづらさを感じてしまうことがある。」

私自身、親子関係と自分の生きづらさを結び付けて考えたことがあります。

家庭の中で安らぎを感じにくかった経験がおありでしたら、生きていく中で、立ち止まりたくなる場面があるのは自然なことだと思います。

生きづらさとは、こうした形で現れることがあるかもしれません。

  • 親や家族のことばかり考えてしまう
  • 自分の意見や気持ちをうまく伝えられない
  • 過去のつらい記憶にとらわれて、将来像を自由に思い描けない
  • 人間関係で同じような躓きを繰り返してしまう
  • どこまでが自分なのか他人なのかわからない
  • 人から理解され承認されることを強く求める
  • がんばっても報われない気持ちになる
  • 自分が何を感じ、何を望んでいるのかが分からない

このような感覚があると、生きづらさを感じることは多くなるかもしれません。

そして、現在の生きづらさと自分が生き抜いた機能不全家族を結び付けるのでしたら、では、どうすれば、少しずつでも、生きづらさを和らげていけるのでしょうか?

そのために役立つ考え方が、以下の3つです。

  1. 親や家族との関わり方を見直してみる
  2. 家族から受け継いだ考え方に気づき、選びなおす
  3. 自分の人生を、自分の手で形づくっていく

ここでは、機能不全家族の中で育ち、大人になった今もなお生きづらさを感じている方に向けて、
その生きづらさを少しずつ癒していくための考え方や道筋をお伝えしていきます。


まず知っておきたいのは、「うまくいかない克服法」もあるということです。

どれだけ本気で取り組んでいても、方向がずれていると、悩みが深まってしまうことがあります。
例えば……

  • 親との関係にいつまでも苦しんでしまう
  • 親への怒りが止まらない
  • 「どうせ私なんて」と自己否定に飲み込まれてしまう
  • 自分に価値がないように感じてしまう
  • 自己憐憫にかられてしまう

これらは、あなたが弱いから起きるのではありません。

そしてその道を変えることは、今からでも少しずつ可能です。


このページでは、機能不全家族によって育まれた生きづらさを、どう扱っていけるのかを当事者の立場で解説していきます。

「自分の人生」を取り戻すための一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

「毒親」という言葉を手放してみるという選択

スーザン・フォワードの著書『毒になる親』が広く知られるようになってから、「毒親」という言葉を目にする機会が増えました。

今では、テレビやSNSなど、さまざまなメディアで当たり前のように使われていますね。

ですが、ここでひとつ提案があります。

「自分の親」を「毒親」と呼ぶことを、そっと脇に置いてみませんか。

なぜなら、「毒親」という強い言葉が、あなたの中にある怒りや憎しみをさらに強めてしまうことがあるからです。

実は「親」とは、目の前にいる特定の人そのもの、というよりも――

あなたのこころの中に存在する「親のイメージ」なのです。

「親って、こういう人だった」「あんなことをされた」――こうした記憶や印象が、あなたの内側に「親」という概念を形づくっています。

そして、そのイメージに「毒」というラベルを貼ってしまうと、

あなたの中に「毒のイメージ」が居座りつづけてしまいます。
頭の中に「毒」を住まわせ続けることになるのです。

言葉には力があります。

たとえば、かつて「セックスレス」という言葉が広く知られる前、同じような状況にあっても、それほど問題視されないことも多くありました。

ところが、「セックスレス」という言葉が生まれてから、それに苦しむ人が増えたと言われています。

「毒親」という言葉にも、似たような側面があるのかもしれません。

怒りや悲しみを抱えることは、当然のことです。

でも、それを苦しみとして長く引きずってしまうなら――

少しだけ視点を変えてみることも、自分を楽にする方法のひとつかもしれません。

たとえ親と離れても、苦しみは残ることがある

「親と決別すれば楽になれる」といった言葉を見聞きすることがあります。

けれども、実際には親と距離を取っても、苦しみが完全に消えるわけではありません。

もちろん、身を守るために距離を置くことが必要な場面もあります。それはとても大切なことです。

でも、だからといって――

物理的な距離が、心の痛みをすべて癒してくれるわけではないのです。

「親に言われた言葉が、いつまでも心に残っている」
「怒りが湧いてきて止まらない」
「なぜかいつも寂しい、虚しい」
「どう生きればいいか分からない」
「自信が持てない」

…こうした声を、私はたくさん耳にしてきました。

なぜ、こんなにも苦しいのか?

それは、育った家庭が「安心できる場所」ではなかったからかもしれません。

機能不全の家庭では、一貫性のなさや予測不能な出来事が繰り返されます。

急な叱責、理不尽な言動、親の感情の不安定さ、予定が突然キャンセルされること――

こうした日々の積み重ねは、子どもの心に「安心していい」という感覚を根づかせるのを難しくしてしまうのです。

その結果、大人になっても以下のような生きづらさを感じることがあります。

大人になってから表れる生きづらさ

  • 自己否定感
  • 罪悪感
  • 深い孤独感
  • むなしさ
  • さみしさ
  • 悲しみ
  • 怒りや憎しみが止まらない
  • 見捨てられ不安

たとえ親と絶縁したり、離れて暮らしたとしても、
これらの感情が残りつづけることはあるのです。

そして、この苦しみを「自分の力だけでなんとかしよう」と思いすぎると、さらに以下のように深みにはまることもあります。

  • 依存症(飲酒・薬物・買い物など)
  • 過度な恋愛へののめり込み
  • 抑うつ状態
  • 強迫的な行動や思考
  • 完璧主義
  • 他者への支配・束縛
  • 他人の問題に巻き込まれやすい
  • 強い不安感

つまり、親と離れても
「生きづらさ」が根底に残ることがあるのです。

だからこそ、自分を守るために距離を取ることは大切にしつつ、
心の奥にあるものと、やさしく向き合うサポートが必要なのです。

親を変えようとすることの限界

「親が変わってくれたら」「理解してくれたら」――そう願う気持ちは、ごく自然なものです。

けれども現実には、親が自分の非を認め、変化しようとすることは、なかなか起きません。

とくに、機能不全家族で育った方の親は、自分の立場や役割に強く執着していることがあります。

子どもからの意見に耳を貸すよりも、「親としての正しさ」を主張してしまうのです。

だからこそ、

「親を変えよう」と頑張りすぎると、かえって傷ついてしまうこともあるのです。

人が変わるには、時間も、安心できる関係も必要です。

ましてや、自分の親を変えるということは、親自身の育ちや価値観すべてに向き合うということでもあります。

それは、ひとりの子どもが背負うには重すぎるテーマかもしれません。

「いつか分かってもらえる」という希望を持ち続けることが、逆に疲弊や虚しさにつながることもあります。

だからこそ――

親を変える代わりに、あなたご自身の人生を歩むことが、大切なのです。

悲しみに触れるワークがつらくなることもある

過去の出来事や感情に向き合うワークやカウンセリングでは、

「もっと大切にされたかった」
「本当は、寂しかった」
――そうした気持ちを丁寧に言葉にする場面もあります。

しかし、やり方によっては、かえって苦しくなってしまうこともあります。

たとえば「グリーフワーク」と呼ばれる過去の喪失体験に深く浸るような手法は、感情を吐き出すことで一時的に楽になるどころか、つらい記憶にとらわれてしまうことがあるのです。

過去の記憶を丁寧に扱うことは大切ですが、
同時に「いまここで生きている自分自身」とのつながりを持つことが、心を守る鍵になることもあります。

回復への道:小さな一歩を踏み出す

少しだけ、私自身の経験をお伝えしたく思います。

私はずっと親子関係で悩んできました。親の問題解決のために東奔西走してきました。

自分の生きづらさの理由を、自分が育った家族に求めてきました。ひどく思い悩むたびに、過去の家族で起きた辛い出来事を思い出すのです。そして、「あの過去の経験」と「現在の生きづらさ」を結び付けてしまうのでした。

この「過去」と「現在」を結び付けることが苦しみを深めることに気づくのです。

私は生まれ育つ家族を選ぶことができなかった。生まれ育った家族をいまさら変えることはできない。

いまさら変えることができない源家族を、生きづらさの原因にしてしまうことで苦しみは固定化されるのでした。

機能不全家族を生き抜くための「考え方」「感じ方」が現在の自分を生きづらくさせているのは確かだと思う。

でも、そればかりではなかった自分に気づくこともできるのです。

過去から脱線した自分に、気づけるのです。

それに気づけるたびに自分自身のリソースを感じるのです。

親はいつまでも私が自由に生きることを妨げてくる。そうだとしても、自分で選んだ道もあったのです。

確かに親のことで気苦労が絶えなかった。親からの侵害があった。

でも、それでも苦しみながらも試行錯誤を続けてきた自分がいる。自分の幸せのために。やりたいことをやるために。

だからこそ、過去から現在へと続く線路から脱線してみて、自分が選んだ線路を歩んでいきたい。未だに辛い記憶を思い返しながらも、自分のことは自分で決める、それができる学びをしていきたい。

―私は、そう願っているのです。

そして無理なく確実に。少しづつ前に進んでいく。

無理に急ぐ必要はありません。小さな一歩が積み重なり、それが最終的に大きな変化をもたらします。

完璧を求めるのではなく、自分のペースで進んでいくことが大切です。

「こうすれば、こうなる」といった直線的な道のりはありませんが、その過程こそがあなたのスキルやリソースを形成していきます。

過去から少しだけ外へと踏み出してみる。今の自分を大切にしながら、一緒に「あなたご自身の道」を歩みませんか。

サポートを受けたいとお考えでしたら、以下のページにお越しください。

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