機能不全家族とは?
機能不全家族とは、家族の一人ひとりが必要としていることが、もらえない家族のことです。
家族のメンバーが基本的に必要としていることは、以下のことがあげられるでしょう。
「生存すること・安全性・安心感・やすらぎ・愛情・落ち着いた気持ち・自尊心・成長・自立して生活するためのスキルを身につけること」
これらは心理学者のアブラハム・マズローが提唱している「人間の欲求の段階」に対応しています。
人間の欲求を「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5つの階層にマズローは分析しました。
人間が社会に出て、人としての能力を発揮して生きていくためには、これらの欲求が家族のなかで満たされなければならないのです。
しかし機能不全な家族では、これら5つの欲求は満たされないのです。
家族構成にはいろいろな形があります。それが原因で家族が機能不全になることはありません。
たとえ一人親であったとしても、必要な欲求が満たされるならば、その家庭は着実に機能していきます。
再婚や離婚によって家族のメンバーに変化があれば、それなりの苦労を経験してしまうでしょう。けれど家族のそれぞれが必要としているものを満たしているならば、家族はきちんと機能します。
親が家にいない家庭であっても「私は祖母のおかげで成長できた」「親戚の支えがあって生きることができた」と、ふりかえることが出来る人がいます。自分にとって必要なことが満たされるならば、誰に育てられても人は成長できるのです。
なぜ家族は機能しないのか?
ではどうして家族は機能しないのでしょうか? それは以下の問題が家庭内に存在しているからです。
「アルコールやギャンブル、仕事中毒などといった依存症を親が抱えている」「両親の不仲」「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」「ネグレクト」「共依存」「親子関係の逆転」「借金」「浮気」「暴言が飛びかっている」
これらの問題が家庭内にあれば、「生存すること・安全性・安心感・やすらぎ・愛情・落ち着いた気持ち・自尊心・成長・自立して生活するためのスキル」を親は子どもたちに与えることはできません。親に余裕がないからです。
ある母親は、旦那の飲酒に悩んでいます。そうした母親は、自分自身に余裕がないので、子どもの養育が難しいのです。
ある夫婦は、喧嘩ばかりしています。夫婦仲の悪さのせいで、子どもの欲求を満たすことはいつも後回しにされてしまいます。
機能不全な家庭に生きるのは苦しい
機能不全家族で育つ子供は、家族に適応するために自分自身を犠牲にしてでも生き抜こうとします。
ストレスや問題に満ちた家庭で生き抜くために、子どもは「おかしい」家族に過剰に適応するのです。適応できないと子どもは親から見捨てられて、生きていけないからです。
子どもは自分の欲求を我慢しながら、お父さんに殴られるお母さんを守ろうとします。
ほんとうは親に遊んでもらいたいのです。学校のできごとを親に聞いてもらいたいのです。しかし父親の暴力が気になって仕方がないので、自分の欲求を我慢して夫婦仲の険悪さに過剰に適応してしまうのです。
暴力や緊張した夫婦仲などといって過酷な家庭に適応することで、子どもは「ほんとうの自分を生きる」のをやめて、「偽りの自分」を生きるのです。つまり機能不全した家庭を生きることで苦しみを味わってしまうのです。
機能不全家族を生き抜いた子どもは大人になってから、自己否定感・不安感・孤独・空しさ等に悩みます。人間関係で問題を抱えます。
機能不全家族を生き抜いた人たちは、次のようなことで思い悩みます。
- なぜ自分が望んだように人生を生きられないのか?
- どうしていつも、同じ躓きをするのか?
- 仕事も恋愛も、どうして思い通りに行かないのか?
- なぜ、いつも寂しくて気持ちが沈んでしまうのか?
- いつも自己を犠牲にしているので被害者のような気持になる。
- どうしていつもこんなに腹が立つのか?
以上のような人生で繰り返される悩みの理由を知るためには、自分自身と家族の関係を振り返ってみてください。振り返ることで、自分がいかに機能不全家族という「問題」に適応していたかが分かると思います。
過酷な家族に適応することで、人は偽りの自分を生きることになります。なぜならば家族に適応するとは「家族を維持するための役割」を生きることだからです。
人は役割を生きることで、自分を偽って生きてしまいます。
自分を偽って生きると、生きづらくなる
では、自分を偽って生きるとは、なんでしょうか?
それは「自分の気持ちに率直になって生きていない」「自分にも相手にも誠実になって生きていない」ことです。
あなたは、自分自身の欲求・意志に対して率直になって生きていますか?
「自分自身の欲求・意志に対して率直になる」感覚が分からなければ、それは無理もありません。自分の欲求・意志に従って生きることが、機能不全家族では許されないからです。
むしろ「親・他人の期待と要求を満たす」ことが優先されるのが機能不全家族なのです。
あなたは自分のことを犠牲にして、親・他人のために生きていませんか?
いつも自分のことを後回しにしていませんか?
それだから生きづらいのです。
自分のために生きることを自分に許していないならば、生きづらくなって当然でしょう。
過去が現在を決めていることに気づく
機能不全家族を生き抜くための行動が、いかに自分の現在の行動や態度を形成しているかについて気づきましょう。
どうして自分自身の欲求・意志を掴んで、それを満たすために生きられないのでしょう?
それは「子どものときに信じ込んだこと」と、「現在の自分が強固に信じ込んでいること」とが一致しているからです。
「周囲の人に従わないと大変な目にあう」と子どもの頃に信じ込まされたならば、「自分を抑えて他人に従うべきだ」という考えに現在の自分は従ってしまうでしょう。
すなわち今の自分の「感じ方」「考え方」「行動の仕方」が、家族の問題に過剰に適応した結果だったことに気づくのは、とても大切なのです。
米国催眠士協会認定ヒプノセラピスト
わたなべいさお