アダルトチルドレンとは、機能不全家族を生き抜いた人のことです。
機能不全家族を生き抜くことで、人は生きづらさに悩みます。
アダルトチルドレンの生きづらさとは、あの過酷な家族を生き抜いた代償だったのです。
では、どうして機能不全家族を生き抜くと、大人になってからアダルトチルドレン特有の生きづらさに悩んでしまうのでしょうか?
それは「役割」を身につけるからです。
機能不全家族を生き抜くことは、大変な辛苦をともないます。
そうした辛さ、苦しみをストレートに感じるのを避けるために「役割」を身につけるのです。
機能不全家族とは、混乱や矛盾が多い家族です。
「急に喧嘩が始まる」
「約束が守られない」
「いきなり親から暴力・暴言を浴びせられる」など、
家庭のなかに混乱や矛盾が起きているのが機能不全家族です。
そのような家庭では、次にどんなトラブルが起きるか予測ができません。
そこで、子どもは役割を演じることで、一貫性や安定性を確保して生き抜こうとします。
役割には以下の4つのタイプがあります。
- 優等生(ヒーロー)
- 世話役(ケアテイカー)
- 透明な存在(ロスト・チャイルド)
- 反逆者(スケープゴート)
ある子どもは、悲しみに沈んでいるお母さんをなぐさめるために、「世話役」という「役割」を生きます。
ある子どもは、混乱している家族を支えるために「優等生」という「役割」を演じます。
こうした「役割」を生きることで、子どもは機能不全家族をサバイブしようとするのです。
しかし大人になっても「役割」を演じながら生きるとしたら、、、
アダルトチルドレンの「特徴的な行動パターン」を生きることになります。
アダルトチルドレンを生きるとは、とても生きづらいことです。
ではなぜ生きづらいのでしょうか?
それはアダルトチルドレンの「特徴的な行動パターン」に従って生きているからです。
「特徴的な行動パターン」とは、次の5つがあげられます。
- 他人をコントロールしたがる
- 完璧主義
- 白黒思考
- 過剰な責任感
- 感情を避ける
これらの特徴的な行動パターンによってアダルトチルドレンは苦しみ続けます。
ここで忘れないで欲しいのは、
「役割」を生きることで、
「特徴的な行動パターン」にそった生き方をしてしまうのです。
では、これから、、、
- 「4つの役割」
- 「5つの特徴的な行動パターン」
について詳しく解説していきます。
自分らしく生きられないのは「4つの役割」のせいです
過酷な機能不全家族を生き抜くために、子どもは「役割」を身につけます。
そして大人になってからも、「役割」を演じて生きるのです。これがアダルトチルドレンの生き方なのです。
つまりアダルトチルドレンは「役割」に縛られて生きていると言えます。だから生きづらいのです。
役割を生きるとは、自分らしく生きていないのです・・・これが生きづらさの原因です。
役割とは、機能不全家族をサバイブするために身につけた「仮の姿」であり本当の自分ではありません。
役割には以下の4つのタイプがあります。
- 優等生(ヒーロー)
- 世話役(ケアテイカー)
- 透明な存在(ロスト・チャイルド)
- 反逆者(スケープゴート)
では、それぞれ詳しく解説していきます。
優等生(ヒーロー)
優等生(ヒーロー)は、家族の英雄、優等生として家族の問題をしずめようとします。
親同士の仲が険悪になること察知して、調整をして夫婦の仲をとりもちます。
親たちの行動に一貫性がないため、ものごとをスムーズに進めるための管理者(マネージャー)なのです。
一番上のきょうだいや、ひとりっ子がこの役割をする場合が多いです。
自分の感情や欲求を抑えて、親のために尽くします。
親がしなければいけない責任を買って出て解決のために努力を惜しみません。
ですから、「責任感が強い」「努力家」「しっかり者」「頼りになる」といわれます。いわば「褒められる」のです。
だけど子ども時代に子どもらしいことを放棄して、まるで大人のように責任や心配事を引き受けてきたのです。
そして完璧にそれをやり遂げることに喜びを感じてしまうのです。
外部からは、そこまでしなくても良いと思われても、家族のことが気になり、ほっておけないのです。
世話役(ケアテイカー)
世話役(ケアテイカー)は、まるでカウンセラーのように失望した家族の心をケアします。
悲しいでいるお母さんをなぐさめます。
お母さんのお父さんへの愚痴を聞いてあげたりします。
家族の情緒面をサポートすることで、誰かの役に立つ行動をします。
そのためには相手の望みを察知しなければいけません。なので感受性の強い子どもとして育ちます。
だから、家族が緊張しているのがわかります。緊張を緩和するために冗談をいったり、おどけたり、機嫌を取ったりします。
また悩みの聞き役になります。なので、いつも自分の傷つきは抑え込んでばかりで、自分の意見を述べたり、感情を伝えるのが苦手になる場合があります。
透明な存在(ロスト・チャイルド)
透明な存在(ロスト・チャイルド)という役割を生きる子どもは、問題のある周囲の状況の中で生き延びるために、気配を消して、出来るだけ目立たなくしようとしました。
周囲を変えることはできないと考えます。
自分の感情や要求を表さず目立たないようにします。
そうすることで、周囲と関わらないようにしたのです。危険がおよんでくることを防ぎたいのです。
自分の存在を消すことで家族からの危害に身を守るのです。
そればかりか、家族が安定するためには自分の気配を消した方が良いとさえ思っています。
感情や願望を表しません。あたかも自分の周りのバリアをはっているかのようです。
反逆者(スケープゴート)
完璧主義も世話役も透明な存在も、家族の問題を回避して、調整することをします。しかし反逆者(スケープゴート)は違うのです。
この役割の担い手はトラブルを起こすことで、他の家族たちが感じているやり場のない憤怒を、正直に外へ出すのです。
問題行動を起こすことで「家族のおかしさ、危うさ」を外部に向かって伝える役目をするのです。
心の痛みや怒りをそのまま行動で表すので親の反感を買います。
さらにそれを証明するかのように、学校をさぼったり、門限をやぶったりします。
悲しみや痛みを認めず、ただ怒りをそのまま行動に移していくのです。
では次からは、「特徴的な行動パターン」についてお話します。
あなたは「特徴的な行動パターン」によって生きづらくなる
多くのアダルトチルドレンは「役割」のいくつかを担いながら大きくなります。
大人になっても役割を演じながら生きるのです。
すると、次のような「特徴的な行動パターン」を生きることになります。
- 「他人をコントロールしたがる」
- 「完璧主義」
- 「白黒思考」
- 「過剰な責任感」
- 「感情を避ける」
・・・これらの5つの特徴は、このページの初めに取り上げましたよね。
ここで、あなたはこのように思ったかも知れません。
「完璧のどこがダメなの?」
もちろん完璧主義は「強み」でもあります。
きちんと最後まで仕事をやり遂げることができる。これは完璧主義のおかげですよね。
しかし仕事が上手くいっている時はいいのです。
けれど、上手くいかなくなると、とたんに「何をやっても報われない」「他人に認められない自分は価値がない」と落ち込んでしまいます。
そして心にゆとりがなくなり、いつも無理をして生きてしまう・・・。
何事も「やり過ぎは禁物」です。
しかし過酷な家族を生き抜いた人は、大人になっても頑張り過ぎるのです。
完璧、白黒思考、過剰な責任感・・・。
「5つの特徴的な行動」のままで生きると、頑張り過ぎてしまうし、やり過ぎてしまう。
よって、人生の幅は狭くなるのです。
ではアダルトチルドレンの特徴について、見ていきましょう。
「他人をコントロールしたがる」
親がいつ怒り出すかわからない、殴りかかってくるか予測がつかない家庭で育つと、目の前の状態をコントロールすることで安堵感を得たくなるのは自然なことでしょう。
「職場以外での人づきあいが苦手です」と、言われるアダルトチルドレンは多いです。
「自分が言ったことで相手からどう思われるか、心配なのです。だから友達の輪に入ることができないのです」
「でも、職場では業務をきちんとこなせば問題は起きませんからね」
・・・といった具合に人間関係に悩みを持たれます。
そこで他人をコントロールしたいと思うようになります。
こうした自分の周囲の人間をコントロールする試みは緊張を高めます。
コントロールできているか、どうかに気を配るあまり、自然な人間関係をつくることが難しくなるからです。
そして対人関係の悩みは大きくなるばかりなのです。
「完璧主義」
アダルトチルドレンは何が普通か? 何が正常な行動なのか? 確信がもてません。
どのように考えたり感じたりするのが普通なのか、わからない。これはアダルトチルドレンの典型的な問題でもあります。
ですから「自分が世間知らずだとか、社会に適応できていないことが知られるのが怖かったです」と、言われる方は珍しくありません。
何が正常な感じ方であり行動なのか、わからないので答えを知りたがります。なので時には影響力のある人の真似をしたり、他者の言葉を真に受けて信じ込んでしまいます。
正しさを知らない自分であることを悟られないようにふるまうあまり、完璧主義を目指すことになります。
さらには白黒思考におちいることもあります。
「白黒思考」
目の前の状況や、問題の把握が極端であって、ほどほどということがない。白黒をはっきりさせないと気が済まない。あいまいなのが許されないのです。これも典型的なアダルトチルドレンの行動パターンです。
他人を「完全に信頼している」か、「まったく信頼できない」かのどちらかなのです。
昨日までは好きだった友人が、今日は嫌いになったというのも起きてしまいます。
部分的な成功は納得できません。完全な勝利でなければ成功と見なさないのです。
物事への結論を急ぎます。じっくり考えて検討をして結論を出すなど、忍耐強く積み重ねていくのが苦手です。
むずかしいそうなことは避けます。やったことのないことには最初から挑戦しないのです。
行動への自己評価が失敗か成功かしかないので、挑戦をためらってしまうのです。
白黒思考で自分を見ていたら、良い自分・悪い自分しかいません。
高い評価を得ている時は一時的に安心できます。けれどちょっとでもミスをすると全面的に「ダメな自分」になってしまいます。なので、いつも落ち込んだり、自分を責めてしまいます。
・・・これでは自尊心を育むことはできません。
でも、世界は白黒の二択の状況ではなくて、非常に複雑であいまいなものです。
でも白か黒かはっきりしたい!のです。
なぜなら家庭のなかは争いばかりだったから。
争いが再燃しないように「上手くいっているのか? ダメなのか?」といった具合にはっきりさせたいのです。
つまり、白黒思考で生きてしまうのです。
「あいまい」だと不安なのです。
どっちつかずの状態は「まだ争いやトラブルの火種がありそうだ!」と、落ち着けないからです。
「過剰な責任感」
「私は罪悪感が強いです。人といると緊張します。そして後になって自分の発言は間違っていたのではないか? なぜあんなことを言ったのか? クヨクヨと後悔が始まります」
「自分が言ったことで相手との関係が壊れるのではないか、びくびくしてしまいます。
自分のせいで人間関係が終ってしまう気がする。だから相手の機嫌を取ったりして合わせようとするのです」
このように他人の感情や行動に責任を感じる人は多いです。
アダルトチルドレンの罪悪感はとても強いです。それは親やきょうだいへの責任を強く感じてきたからです。
「母親が悲しんでいるのは自分に力がないからだ」
「弟ばかり虐待された。そんな弟を守ることができなかった」
こうして全力で頑張っても報われなかったという経験を重ねていくと、罪悪感を背負ってしまいがちです。
「誰かが怒っていると、自分が何か悪いことをしたように思ってしまう。そして自分を責めてしまう」
「他人が悲しんでいると、自分がなんとかしないといけないと焦ってしまう」
このように自分の責任の範囲を超えて無理に責任を背負い込んでしまう。
さらには、問題を解決できなかった罪悪感や無力感を覚えてしまうことになります。
「もえつき」という言葉をご存知ですか?
バーンアウトともいいます。
あれだけ精力的に意気揚々と取り組んでいた仕事に対して、ある日突然、仕事にやる気を失ってしまう。こういった状態を「もえつき」といいます。
大変な業務が続いて、しかも誰にも手伝ってもらえない。頑張っても仕事が片付かない。
しかも、仕事への思い入れが強いと無理に責任を背負い込んでしまいます。そうなれば「もえつき」の状態にやがては至ります。
まったくやる気が起きず、「うつ」になることもあります。
ここで痛みを麻痺させるために飲酒や薬物、ギャンブルや恋愛に依存していくケースもあります。
こうやって何かに依存することで紛らわすのではなく、過剰に責任を負っていないか? 他者の面倒ばかりみて自分へのケアを忘れていないか? 頻繁にチェックすることをおすすめします。
しかし次に述べる「自分の感情を避ける」ようでは行き過ぎた行動を止めることはできないでしょう。
「感情を避ける」
自分の感情や感覚がわからないと訴える相談者さんは多いです。
そもそも役割を演じることは自分の欲求やニーズを感じることを避けるのが目的です。
子どもは親から叩かれると泣いてもいいのです。しかし泣けなかったし、泣いても「泣くな」と叱られるのです。だから、たとえば「優等生」の役割を演じるのです。
欲しいものがあれば「おもちゃ買って!」と親に伝えてもいいのです。しかし「我慢しような」と、言われるのです。我慢ばかりしてきた子は、やはり「優等生」という役割を担うことになりました。
アダルトチルドレンは、子どものときに何か感情を感じることを許されなかったのです。
辛いことがあってお母さんのところへいって泣きたかったのです。でも、「泣くな」「もっと強くなりなさい」と叱られたのです。
こうして感情を抑えることを覚えた子どもは、大人になっても「感じること」を避ける癖がついてしまいます。
それゆえに、心をオープンにして自分の気持ちを相手に伝えるのが苦手になります。
あるいは暴力や暴言を吐く親の元で生活した子どもは、感情を出すことに良い印象を持てません。
感情のままに暴れる親を見るにつけ、感情って怖いと感じたからです。
感情は人が本能として自然に湧き出るものです。
悲しい、怒り、寂しい、嬉しいなどの感情は感じても良いものです。
感情にネガティブもポジティブもなく、感じてはいけない感情はありません。
怒りは、マネージメントしたりコントロールしなくてもいいのです。
「不安」を手放そう
「じゃあ、役割はどうすれば脱ぎ捨てられるの?」
「5つの特徴的な行動パターンを、やめるためには何をすればいいの?」
ここまで、読まれたあなたは、そのように思われたことでしょう。
でも、役割を辞めるって難しい。
どうしてかと言えば、不安になるから。
人は不安だから「役割」にしがみつく。
だから役割をかんたんに捨てられない。
あなたは、仕事で不安を覚えたら「もっと頑張ろう」と、完璧主義者になりませんか?
「仕事が出来る人」「物知り」を見て不安になると「自分も出来る人になるぞ」「資格を取るぞ」と、優等生になろうとしませんか?
恋人との関係で不安になると「不安になるくらいなら、こっちから別れてやる!」と関係を壊したくなる衝動にかられませんか?
あるいは恋人のお世話をして、尽くそうとしませんか?
つまり不安感を抑えるために「役割」があることに気づきませんか?
そうです。「役割」を捨てきれないのは不安が強いから。
だから「役割」を捨てるには、まずは不安を消し去る必要があるのです。
不安感をゆるめことで「役割」を辞めることができます。
そして「5つの特徴的な行動パターン」から抜けだせます。
実のところ、アダルトチルドレンの苦しみの根っこには、強い不安があります。
アダルトチルドレンの克服、「役割」をやめる、「特徴的な行動パターン」を抜け出すためには不安を消し去る必要があります。
では、どうすれば「不安」を消し去れるか? について書いたページを用意しましたので、ぜひお読みください。
米国催眠士協会ヒプノセラピスト
わたなべいさお