アダルトチルドレンはこうして見出された
アダルトチルドレン(ACと略されます)という言葉は偶然に生まれました。
1977年、あるアルコール依存の入院患者病棟にて、患者家族をケアするためのプログラムが行われました。
アルコール依存症の人だけではなくて、その家族に対するケアも必要だと判断されたのです。
家族を年齢別に分けて実施されたそのプログラムにおいて、
12歳までを「ヤング・チルドレン」
13歳~19歳までの「ティーンエイジ・チルドレン」
20歳以降の家族を「アダルト・チルドレン」と呼んだのです。
つまり、アダルトチルドレンとは年齢で分けた際の名称であって診断名ではありません。
もちろんアダルトチルドレンとは、「大人になれていない子ども」という意味ではありません。
ところで、プログラムが進むにつれて、あることが見いだされました。
アルコール依存症者をかかえる家族の子どもたちは、年齢が高くなっても「まるで心の中に傷ついた子どもがいるかのようだ」ということが分かったのです。
つまり、アルコール依存症の親を持つことで、子ども時代に受けた影響をいつまでも抱えていて、そのために生きづらさを抱えていたのです。
よってケアの対象は、依存症者だけではなくて、家族である子どもたちにも広げるべきであることがわかったのです。
ただ、アダルトチルドレンとは診断名ではなくて、生きづらさといった課題に対して専門家によるケアの必要があるのです。
アダルトチルドレンは「役割」の仮面をかぶって生きる
アダルトチルドレンは当初、アルコール依存症の家族から生まれた概念でした。
しかしその後、意味する範囲は広がったのです。
すなわち、家族にアルコール依存や虐待がなくても、家族からアダルトチルドレンが生まれてくるからです。
親の期待と要求を満たすことが優先されて、子どもの欲求はいつも後回しにされる家族では、依存症や虐待がなくてもアダルトチルドレンは輩出されます。
今ではアダルトチルドレンとは、自分の生きづらさの淵源は親子関係にあると認識している人のことを言います。
こうして、アダルトチルドレンは生きづらさの根源を模索し、自分の人生を取り戻すための「道案内」になったのです。
アダルトチルドレンを生む家族を「機能不全家族」と呼びます。
機能不全家族について簡単に述べますと、
● 親が何らかの理由で子どもの欲求やニーズを満たすことができない。
● 親が何らかの問題を抱えているので、子どもの欲求やニーズを満たすよりも、まず親の不満・欲求を満たすことが優先される。
● 子どもは親が抱える不満・欲求・ニーズを満たすよう期待され要求される。
● 子どもは親の不満や欲求、ニーズを満たさないと自分たちの欲求やニーズを満たしてもらえない
以上のことから、機能不全家族は子どもにとって必要な養育や、大人になるために習得すべきスキルや、安全性・安心感に満ちた環境が家庭内で欠如していると言えるのです。
たとえ親が離婚をしていて父親や母親のどちらかが家にいなかった家庭であっても、安全で安心が確保されて十分な養育がなされていたならば、機能不全家族とはいえず、お母さんだけの家、お父さんだけの家でも問題がないケースもあります。
機能不全家族をサバイブする子どもは、「役割」を演じて生き残ろうとするのです。
機能不全家族の特徴として「一貫性がない」というのがあります。
「突然、大きな怒り声が大人から発せられる」
「親の言うこと態度が、ころころ変わる」など、
混乱や矛盾に満ちていて、次に何が起きるか予測ができず常にビクビクしないといけません。
そこで、子どもは以下の4つの役割を演じて生き抜くことで安心感を得ようとするのです。
- 優等生(ヒーロー)
- 世話役(ケアテイカー)
- 透明な存在(ロスト・チャイルド)
- 反逆者(スケープゴート)
そしてさらに機能不全家族で育った子どもは、大人になっても「役割」を演じるのです。
大人になっても役割にそった思考・行動のパターンを引きずって生きるのです。
「三つ子の魂百まで」といわれますが、子どもの時に演じた「4つの役割」が大人になると生きづらさを生む特性として、その人の心に暗い影を落とすのです。
「親の言うことに従うと、親の機嫌は良くなる。ならば『優等生』になることで、もっと親を喜ばそう」
として優等生の役割を演じた。そしたら、家族生活は上手く回った。
そしたら、たいていの場合、その役割はずっと大人になっても引きずります。
長年にわたって身についた思考の癖や行動の癖ですから、大人になっても手放すのが難しいからです。
ましてや、「役割」を生きることは正しいと認識しているので、疑うことが難しい。
けれど「私はずっと頑張っているけど、報われない。なんだか生きづらいよ」と、心身は悲鳴をあげている。
その生きづらさは、親子関係のなかで「優等生」という「役割」を生きてきたからです。
まさにアダルトチルドレンとは「現状、感じている生きづらさの起因が親子関係にある」と認識している人といえるのです。
よって、単にコミュニケーションスキルを学んでも解決するものではありません。
アダルトチルドレンの方で、とても人付き合いが上手くて、コミュニケーションが得意で、初対面の方にでもすぐに打ち解けたり、場の雰囲気を和ますムードメイカーの資質を持つ方が結構多くいらっしゃいます。
会社を経営されたり、バリバリと仕事が出来る方も珍しくありません。
しかしながら、外から見るとうかがい知れない、心の内に苦しみや深い孤独感を抱えている場合が多いのです。
アダルトチルドレンを克服したい方は、次のページをお読みください。
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