機能不全家族における子供への影響は、どういうものがあるでしょう。
機能不全家族における子供は、どんな特徴があるでしょうか。
そのような疑問に、このページは明確に解説いたします。
機能不全家族では「大人になるための大切なこと」を子どもは学べない
子どもは家族のなかで、次のような「大人になるための大切なこと」を学びます。
- 自分の感情や欲求を満たすために、どのように周囲の人とコミュニケーションをすればいいか。
- 欲求が満たされない時に感じる葛藤を、うまく対処するには?
- 自分の人生に主体的に取り組む姿勢や、積極的に行動することの大切さ
- 努力を継続する能力
- 計画を立てる能力
- 自分を守るために、何をしたらいいか?
- 自分自身を活かすために、何をしたらいいか?
しかし、これらの「大切な学び」を、機能不全家族は子どもに与えられないのです。
親が親の役割を果たせていないなど、家族システムが機能不全しているため、子どもに「大切な学び」を提供できないのです。
機能不全家族では、たとえば「親が問題を抱えている」「身体的、心理的な虐待がある」「家のなかに安らぎがない」といった具合に「人間が健康に育つための条件」が欠如しているのです。
よって、子どもは「大人になるための必要な技術・知識」を身につけられないのです。
つまり、機能不全家族で育つ子どもは、人間関係で必要なことを学ぶ機会に乏しいのです。
むしろ子どもは「適切ではないコミュニケーションの仕方や、行動、考え方」を身につけてしまうのです。
よって大人になってから「他者との関係が取りにくい」「人を信じることができない」「いつも不安で孤独」など、生きづらさを抱えてしまうのです。
また「自分の感情が分からない」「自分の気持ちを言葉で伝えるのが苦手」といった悩みを抱えます。
「機能不全家族」では立場の弱い子どもが苦労をしてしまう
機能不全家族には様々なタイプがあります。
ですが、共通して言えるのが「弱い立場である子どもに暴力・暴言が流れ込む」ことです。
ハラスメントや暴力といった支配は、強い者から弱い者へと行使されます。
「祖父母」の暴力・暴言が、その子どもたちである「父親・母親」に行使されます。
そして「父親・母親」による暴力・暴言が配偶者や子どもたちに行使されます。
さらに子どもたち同士で、「兄や姉」が「弟や妹」に暴力や暴言を浴びせるのです。
このように暴力や暴言は、上の世代から下の世代へと流れ込むのです。
ですから機能不全家族における子供への悪影響は、はかり知れません。
直接、暴力や暴言をふるわれなくても、それを見聞きしているだけでも、子どもは心に傷をつくってしまいます。
支配とは、暴力や暴言によるものだけではありません。
「金銭」が家族を支配しているタイプがあります。
祖父母の代で大きな借金があったとか、
商売をしていたせいで、家族はとても金銭に執着していた。
人間よりも金銭の方が、大切に扱われていた。
家族は、お金を稼ぐことを至上命題として課せられたり、
お金を稼げない家族は見下されていた。
そんな金銭が家族を支配していたならば、子供は大人になってから、がむしゃらに働くようになるかも知れません。
ネグレクトも支配の一種です。
ネグレクトとは「子どもが健康に育つための条件」すなわち食べ物や飲み物、住居、医療、学習環境など適切な成長や発達に必要な配慮など、子どもが生きていくうえで不可欠なものを養育者が提供しないことです。
機能不全家族には、このネグレクトが存在することがあります。
ネグレクトによって子供は「自分なんてどうでもいいんだ」と思い込みます。
よって大人になってから自尊心を持てず、いつも落ち込んで、クヨクヨしてしまいます。
このように、機能不全家族では「子ども」が大変な苦労を味わうのです。
子どもが機能不全家族で味わう辛い体験とは?
「子どもが家庭内で味わう辛い体験」をリストアップしました。
自分が生まれ育った家族を振り返りながらチェックしてください。
- 家族が希望を失い失望している
- なんとも言えない空しさ、やるせなさで疲弊している
- 温かみや団欒が乏しく、緊張感で気が張り詰めている
- 怒り・恨み・恐怖・不安が満ちている
- 親が子の成長を喜ばない
- 悲しみや泣き言が許されない
- 嬉しいとか楽しいといった肯定的な感情だけが許される
- 何を達成したかに関心がもたれて行為の背景にある感情は軽視される
- 家庭のなかで秘密や、ふれてはいけないタブーがある
- 家族のなかで強い者の考え方・価値感・発言に従わなければいけない
- 家族の問題は否認される(なかったことにされる)
- 子は親の期待と要求にこたえることが優先される
- 強くあるべきだ、子は、親はこうあるべきだ、などという「べき」思考が優先される
- 子が親を慰める、支えるなど親子関係が逆転している
- 親が子の約束を果たさないなど親の気まぐれで予定やルールが変わる
- 頑張っても報われない
- 恥ずかしい目にあわされることがある
- 家族は自信をなくし傷ついている
- 相手をあやつる言葉や尊厳を傷つける非難の言葉が飛びかっている
以上が機能不全家族の特徴であり、子どもが味わう気苦労のリストでした。
チェックしてみていかがだったでしょうか?
それぞれの項目を補足して説明します。
- 「泣いてはいけない」
- 「泣くなんてみっともない」
- 「お兄ちゃんだから、お姉ちゃんだからメソメソするんじゃない
- 「文句があるなら出ていけ」
- 「いつまでも調子にのるなよ」
・・・こんなことが子どもに対して言われる家庭では、泣いたり、悲しんだりすることは許されません。
笑顔でも許されません。「いつまでも喜んでる場合じゃないぞ」「そんなくらいで喜ぶな」と、叱られるからです。
つまり顔が「無表情」の時しか、子どもは親に受け入れてもらえないのです。
泣いてもダメ。悲しんでいても叱られる。笑顔いっぱいで喜んでいてもダメならば、子どもはどう感じるでしょうか?
「ある特定の感情」や「親の価値観に応じた感情」しか許されなくなります。
子どもからすれば親の顔色をうかがって生きなければいけません。
恥ずかしい目にあわされることがあるとは、まずは性的なハラスメントがあげられます。はたまた子どもをしつこくからかったり、見くびったり、けなしたり、
親からの「お前は馬鹿だ」「何もできないやつだ」という発言は子どもを軽蔑し、恥ずかしい目にあわせていると言えます。
家族の介護をやらせたり、弟や妹の世話をやらせるのは、
子どもの能力では困難なことをやらせているのです。
子どもは子どもとして生きてこそ、大人になるためのスキルを身に着けられます。
それなのに、子どもに「大人の価値観」(これくらいのことが出来ないのはダメだ)を押し付けるのは、子どもの権利を奪います。
つまり子どもの成長を阻害するのです。
「お前はドジだな」「お前はダメな人間だ」などの言葉は、子どもの尊厳を傷つけ、子どもの心の発達や成長に不可欠な愛情や優しさを与えていません。子どもの成長を喜び歓迎しているとはいえないでしょう。
「相手をあやつる言葉」とは、子どもに罪悪感を抱かせる言葉です。
たとえば子どもから言い返された時、「お母さんが悪かったわ。私が悪いのよ」と親が謝ったとしましょう。
これを聞いた子どもは、しだいに「なんて私はお母さんにひどいことを言ったんだ。お母さんを悲しませてしまった」「親に申し訳ないことを言った(やってしまった)」と罪悪感を持ってしまう。
機能不全家族では、罪悪感を植えつける言葉で子をあやつり、コントロールするのです。
家族のなかで子どもが味わう「辛い体験」
機能不全家族で育つ子どもは、どのような体験を味わうでしょうか。
機能していない家族では、子どもの約束は守られにくい。「ちゃぶ台返し」が頻繁に起こります。
今度の日曜日に遊びに行くと約束していたのに、急に親が「遊びにいかない」と言い出すのです。
このように「遊びに行く」約束を親がしていても、それが実行されず裏切られることが多いのです。
親にとって遊びにいくのが邪魔くさく感じられたら、遊びは簡単にキャンセルされます。
つまり、子どもと親との約束が実行されには「条件」があるのです。
それは「親の要求」と「子どもの要求」が合致した時だけ、約束は実行されるのです。
つまり親の気まぐれによって遊びに行けたり、「うるさい。ひとりで遊びなさい」と言われたりするのです。
機能不全家族では「約束は守られない」のです。つまり家庭に一貫性がないのです。親の言葉に信頼性がないのです。
「めんどくさいな。俺は仕事で疲れているんだ」と親が不満を抱えていたら、遊びに行く約束は簡単に破られます。
「ちょっと、相手をしてやろうか」という気持ちのときだけ、遊びに行けるわけです。
「テストの成績が良ければ遊びに連れて行ってやる」という具合に「親の期待と要求に応えた時だけ」子どもとの約束は実行されるのです。
この仕組みを子どもは理解していませんし、できるわけないですよね。
ですから、約束が守られない=自分の欲求が満たされないのは「自分がいけない子だからだ」という理解しかできないのです。
そしてまた「良い子でいなければ約束は守ってもらえない」と子どもは考えます。
なので子どもは親から無条件で可愛がられている気がしないのです。
だから大人になってから「相手の顔色ばかりをうかがう」ようになるのです。
親から条件付きの愛情しかもらえなかったせいで、他人の気分に振り回される大人になってしまうのです。
子どもは「家族のタブー」によってさらに苦労をしてしまう
機能不全家族の特徴として「家族のタブー(秘密)」があります。
世間に知られては困る秘密があって、そのせいで子どもは大変な心労をかかえます。
では、どうして家族にタブーが生まれるのでしょう。
機能不全家族では突然の変化・衝撃的な出来事が起きることはざらです。
親が急に激高しあって喧嘩が始まるとか、
深夜に父親が酔いつぶれて帰宅、そして大喧嘩が始まるとか、
両親が突然、別居したり離婚したり、
あるいは家族のなかで自殺者が生まれるなど、
衝撃的な体験を子どもはくりかえし味わいます。
しかもこうした衝撃的な出来事の原因は、親から説明されません。
なぜ母親が家を出ていったのか。
父親が家に帰ってこなくなったのか。
なぜ母親が夜ひとりで泣いていたのか。
なぜ親は朝からお酒を飲んで寝ているのか。
深夜、見知らぬ若い女性が家にやって来て、口論になったのはなぜか。
といった具合に家庭内に起きる悲惨な出来事の理由はタブーになっているのです。
子どもからすれば「何か聞いてはいけない秘密があるはずだ」と、家庭のタブーをかぎとります。
たまに「どうしたの? 何があったの?」と子どもは親に聞きます。
「どうして昨日、若い女の人が家に来て、大喧嘩が始まったのか」そのワケを知りたいのです。
そんな子供の疑問に対して親は「そんなことを、子どもが聞くもんじゃない!」と切り捨てます。
このように家族はオープンではなく閉鎖的で、なにか触れてはいけない「秘密」があるように子どもには思えてくるのです。
こういった密室性が家庭内で進行していくと、子どもは思い通りに感情を言葉にすることが出来なくなります。
心を感じながら感情を言葉にすることにためらいが生じるならば、感情を感じないようにします。
すると、しだいに「自分自身の感情」がわからなくなるのです。
寂しさ、悲しさ、怒りを感じられなくなる・・・いや、感じてはいけないものだと思い込んでしまう。
だから大人になってから「自分がわからない」「何をしたらいいかわからない」と思い悩むのです。
ちなみに、「感情を素直に言葉にして表現できない」のは、親たちも同じなのです。
親同士、素直に気持ちを伝えられないのです。
そのせいで、子どもは母親の言葉を父親に伝えるための伝令役になったりするのです。
両親はお互い向き合って話し合うことはせず、「お父さんの様子、最近どうなの? なにか私のことを言っていた?」と母親は子どもに話すのです。
そして、子は母親が言っていた内容を父に伝えるのです。
そして「お父さんはこう言っていたよ」と母親に伝えるのです。
つまり親同士の会話が間接的に行われるのです(こういうのをクロストークと言います)。
たとえば夕食の食卓で両親は決して向き合いません。
親たちはずっと子どもに向かって話すのです。
こういう不自然な会話形態に、子どもが付き合わされるのです。
「外部に知られると恥ずかしい事実」が家庭にあれば、子は友達を家に連れてくることが少なくなります。
なぜだと思いますか?
子どもは幼いながらも「ウチの家にはタブーがある」と気を使うので、友達を家に呼ばないのです。
また親も家に遊びに来られるのが困るので、他の子と遊ばせないようにすることもあります。
私自身、親が喧嘩ばかりしていたし、細い路地裏の木造アパートで、お風呂もない家だったので、恥ずかしくて友達を家に呼んだ経験がありません。
路地を入る時は、周りを見渡して、誰もいないことを確認してから入ったものです。
実は、私の母親も家が世間に知られるのを怖れていた人でした。
子ども時代を機能不全家族で育った大人のあなたへ
機能不全家族で心の傷をつくってしまった。生きづらさを抱えてしまった。
だからと言って、今さら別の家族に産まれなおせません。
では、どうすればいいのでしょうか?
そこで鍵になるのが「不安」です。
機能不全家族で欠如していたのは「安心」でした。
安心につつまれて生きられなかったからこそ、あなたは「不安」を強く感じるのです。
不安感をあなたから切り離すことが、機能不全家族を克服する道です。
詳しくは、次のページをお読みください。
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