「アダルトチルドレン」というテーマに関して、こんなお声をよく耳にします。
「アダルトチルドレンについて書かれた本を読んでみたけれど、どうしても苦しさがなくならないんです」
そうしたお気持ちを抱く背景には、いくつかの理由があるように思います。
今回は、その中でも大きな要因のひとつについて、少し掘り下げてみたいと思います。
アダルトチルドレンに関する書籍の多くは、「幼少期に親との関係でどのような影響を受けたのか」という視点から書かれています。
それらの本を読み進めていくうちに、「ああ、私も似たような体験をしてきたかもしれない」と感じられる方も多いのではないでしょうか。
そして気づけば、”過去の家庭環境が、今の私の苦しさを生んでいるのかもしれない” という思いが強まっていきます。
これはとても自然なプロセスですし、ご自身のルーツを知ろうとするその姿勢は、とても大切なものだと思います。
本の中には、苦しさを解決するための具体的な方法も数多く紹介されています。
・自分のニーズを理解する
・未来のビジョンを描く
・心の痛みをケアする方法を学ぶ
・自分との境界線や、他者との関係性を見つめ直す
・感情を健やかに表現していくための方法を取り入れる
こうした取り組みは、どれも意義のあるものです。
けれども、それを読んだ瞬間に「よし、やってみよう」と前向きになれるかというと、そう簡単ではないでしょう。
また、実際に取り組んでみても「思うように続けられなかった」方もおられることでしょう。
これは、あなたの努力不足ではありません。
むしろ、あのような重たい過去を抱えながら、今ここでその課題に向き合おうとしている姿を私は尊重します。
生きづらさを解消したい。だから本を手にした。けれど、本に書かれている提案をひとりで進めていくのは、簡単なことではありません。
さらに難しさを増す背景には、「過去が現在を決めている」という物語に強く影響されてしまう、という点があるように思います。
本を読むことで、忘れていた過去の記憶がよみがえってくることがあります。
親とのやりとりや、そのときに感じたことが、急に思い出されることもあるでしょう。
それによって怒りや悲しみが湧き上がってくるのは、当然の反応です。
そうなると、今の自分がどうにかしようとする前に、過去に圧倒されてしまうのです。
「過去は変えられない。いまさら生まれ育った家族を変えられない。どうすればいいんだよ」と、感じてしまうのも無理はありません。
そして、せっかくの意欲も、そうした重苦しさに押し潰されてしまうのです。
本を読むことで「かえって、しんどくなった」という経験をしたとき、大切なのは「過去が現在をすべて決めている」という見方から、少し離れてみることかもしれません。
たしかに、過去の出来事が今の私たちに影響を与えている。けれども、それだけがすべてではないはずです。
私たちには今、別の物語を紡いでいく力もあるのです。
アダルトチルドレンの本に書かれていることの多くは、苦しみを理解し、支えようとする思いに満ちています。
しかし、その筋書き……「過去が現在に影響を与えている」に自分自身を閉じ込めてしまわないこと。
それが、新たな一歩につながるのではないでしょうか。
過去の重さに圧倒されるのではなく、そこから少しずつ距離を取ることで、あなた自身の「今」の可能性に目を向けることができるようになります。
その先に、あなたらしさが自然と育っていく時間が、きっと待っているはずです。
アダルトチルドレンの本は「現在と過去を結び付ける」ことで今の苦しみを解明することをしています。
さらに過去から続く物語から少し離れることができる知恵が本に書かれていれば、なお良いでしょう。
そして読書には、限界があるかと思います。アダルトチルドレンの生きづらさは孤独の中で解消されるものではないと思うからです。
サポートを受けながら生きづらさを解消したいと思われたら、こちらのページをお読みください。

米国催眠士協会認定ヒプノセラピスト
わたなべいさお
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