機能不全家族の父親とは?
ひとことで言えば、こうなります。
「釣った魚に餌をやらない」
機能不全家族の父親とは、結婚してから妻や子どもの世話をしないのです。
仕事ばかりで、家庭をかえりみないのです。
あまつさえ家族に対して暴言をあびせたり、暴力をふるったりします。
父親の役割に「家族を外部から守る」というのがあります。しかし機能不全家族の父親は、家族を守ろうとしません。むしろ家の外でためこんだストレスを家庭に吐き出します。お酒の力を借りて家族に鬱積をまきちらします。そのたびごとに、妻・娘・息子は「なんとも言えない気持ち」になります。
子どもの不登校に頭を悩ましている妻は、悩みを夫にわかってもらいたいのです。しかし夫は、何もしません。仕事ばかりしていて、休みの日は、お酒を飲んで寝ています。妻の悩ましい気持ちを理解しようとはしません。
自分が機嫌のいいときは子どもと遊びます。しかしそうでないときは、子どもを邪険に扱います。妻・子どもへの態度は、その日の気分次第なのです。
「怒鳴ってばかりの父親」「仕事ばかりしている父親」「話し合いができない父親」「心の交流ができない父親」「お酒を飲んでばかりの父親」・・・こういう父親のせいで、妻や子どもは憂鬱です。
飲酒をして黙りこくっている。仕事の憂さを家庭に持ち込む。ときには暴言・暴力を家族に浴びせる。ですから家庭に安らぎはありません。
いつも妻はいら立ち、不満を抱えています。家事や子どもの教育に不安を覚えています。
そんな妻を支えるのが、子どもたちです。お母さんの気持ちを察知して、彼女を支える役目を子どもは担うのです。
つまり子どもは母親を支えることで、夫婦関係を維持するためにがんばるのです。そうなれば子どもは、子どもとして生きることができなくなるのでアダルトチルドレン(AC)になるかもしれません。
家庭に暴力が存在せず、かつ、依存症の人がいなくても、アダルトチルドレンは生み出されるのです。
どちらかの親の無理解によって、夫婦関係がおかしくなり、子どもが親のいら立ちを癒す役割を担うことで、そして子どもは自分の欲求を抑えることで、その子はアダルトチルドレンになるかもしれません。
「俺のおかげで食えてるんだろ」
家族の世話をまったくしない父親には言い分があって「俺は働いているんだ」「俺のおかげで食えてるんだろう」と彼は考えているのです。
こうした「働いているからいいだろ?」という父親の態度は、妻を苛立たせます。なぜなら「家事」は、とても大変だからです。
毎日の買い物、献立、炊事、子ども送り迎え、教育の悩み、役所への手続きなど、家の仕事はとても煩雑です。
それゆえに、まったく家事を手伝わない旦那の態度に、妻は不満をにえたぎらせるのです。
だから機能不全家族の母親は、いつもイライラしているのです。
しかし父親は「働いているからいいだろう」という考えが強いのです。
父親に、家族の気持ちを理解して、気遣ってもらうなんて無理な話なのです。だからますます母親は苦しみます。
母親は、いつも漠然とした不安をかかえて、憂鬱です。そういう母親をケアする役目は、娘や息子がになうのです。
娘や息子は、母親を支えます。あわせて母を大切にしない父を憎みます。
父親からすれば面白くありません。「どうして俺の気持ちはわかったもらえないのか」と父親の家族への不満は高まります。父親もまた家族に対していらだち、いつも不機嫌です。
「仕事でこんなに頑張っているのに、どうして俺は癒されないんだ」と父親は考えているのです。
そんな父親は自分自身のストレスを飲酒や喫煙で晴らそうとします。ときには暴言や暴力を家の中にまきちらします。よって家庭はいつも緊張していて、安らぎはありません。
しかし、家庭に安らぎがないのは自分の家族に対する無理解のせいなのに、そのことに父親は気づけないのです。
どうしてだと思いますか?
この国は、男性中心の社会です。
男性中心社会では、男性は外で働き、女性・子どもはそんな父親を家庭の中で支えるのが自明となっています。
外で働いて疲れた父親を癒す場としての役割を家庭は担います。だから仕事のストレスを父親は家庭にまきちらすのです。
長時間労働ゆえに働いて疲れ果てた父親に、妻や子供の気持ちを理解する余裕はありません。むしろ「ゆっくり家の中ですごしたいんだ」と思っているのです。
「家でゆっくりしたい」・・・まあ、その気持ちは受け入れられるでしょう。
けれど、妻や子供たちが「お父さん、ちょっと私たちのことを分かってよ」と要求すると、機能不全家族の父親は、家族の話をゆっくり聴くことはしません。うるさがったり、暴言や暴力ではねのけるのです。
子育ての悩みを妻は旦那に聞いてもらいたいのです。しかし「子育ては、おまえの役目だろ」といって妻と一緒に悩みを解決しようとはしません。
ある日のこと、高校生の娘と妻が喧嘩をしています。しかし父親は、それを無視するのです。
「馬鹿じゃないのか。そんなことで喧嘩ばかりしていて。俺は仕事のことで頭がいっぱいなんだ」と考えているのです。どうして娘と妻が大喧嘩しているか。それに関心がないのです。
なので妻や子どもからすれば「なんで、お父さんは家族のことに無関心なのか?」と悩むのです。
家の外で、仕事ばかりしている父親からすれば、妻や子供の悩みなんて、ちっぽけなものだと感じているのです。こうして父親と妻・子どもたちとのすれ違いは大きくなるのです。
話し合いではなく暴力・暴言でおさえつける
機能不全家族では「話し合い」はありません。いきなり喧嘩が始まります。
旦那に妻が「たまには子どもを遊びに連れて行ってよ」と要求します。
子どもたちも父親に「もっと遊んで欲しい」と要求します。
それらの要求に「うるさい」「黙れ」とひとことで済ますか、無視をするのが機能不全家族の父親です。
あるいは暴力をふるうことで家族を黙らせるのです。お酒を飲んで黙りこむ人もいるでしょう。
ではどうして、機能不全家族の父親は、妻や子どもと話し合いができないのでしょうか?
それは彼が生まれ育った家庭に「話し合う」文化がなかったからです。
おそらく彼も子ども時代、自分の父親から「黙れ」「うるさい」と言われてきたはずです。あるいは無視されてきたことでしょう。
人間とは、自分がされたことのないことを、他人にはやってあげられないのです。自分の親から「黙れ」「うるさい」と一刀両断されて育った人は、親になってから家族の話にゆっくりと耳を貸すことはできないのです。
ましてやこの国では、「男性とは強くあらねばならない」という観念があります。
「強くなければいけない」「弱音を吐いてはいけない」「いつまでもメソメソしていてはいけない」「できる男でないといけない」と言われながら男性は育てられがちです。
「男性は強くなければいけない」という観念が強いものですから、男である父親は人がもっている「弱さ」を受け入れられないのです。
ですから妻や子供の不満を聞けないのです。「黙れ」「うるさい」と一刀両断してしまうのです。
「そうか。そう思っているんだね。もっとお母さんや君たちのことを考えるね」なんて弱い人の立場を理解した発言なんてありえないのです。
家庭内での弱い立場の人=妻・子どもに厳しくあたることで、父親は男としての強さを証明しようとしているのです。
自分は正しいと思っている
父親は、家族の世話をまったくしないどころか、暴言や暴力を家庭にまきちらしてしまう。
妻の子育ての悩みに耳を貸しません。子どもの気持ちを聞いてやることもしません。けれど家族生活における間違いを父親は決して認めません。
なぜなら父親は、自分の間違いを認めると「自分の中の男性像」が崩壊するからです。だから絶対に父親は、妻や子どもに謝りません。
男性中心社会において、男性というのは「強くあるべきだ」という観念が強いものです。
ということは、弱者や弱音を吐く者に対して冷たい態度で接することが男性の強さの証明となるのです。
家庭内における弱者=妻・子どもの言い分を聞くことは、自分の強さの証明になりません。
もっといえば、我が国では未だに男性は「結婚をして子どもができて一人前」としてあつかわれる。
よって男性は、結婚をして子どもができるだけで自己を肯定できるのです。もうその時点で満足してしまう。
さらに女性・子どもという弱者に冷たい態度でのぞむことで自身の強さは証明される。
だから妻と娘が大喧嘩していても、その場を素通りして無視できるのです。
「なんだおまえらは子供じみたことで、いつまでももめやがって」とでも思っているのでしょう。
もちろん、そんな考えを持ち合わせていない男性もいるでしょう。
しかし機能不全家族の父親というのは、今まで述べてきた傾向が強いのです。
ですから妻や子どもからの要望について、「それがどうしたのだ」「子育てはお前に任せている。お前がしっかりやれよ」と、父親は威張るのです。威張ることで男性の強さを実感したいのです。
機能不全家族の父親はたいてい、世間体を重視します。世間から「立派なお父さん」とみられたいので、世間からの評価を気にするのです。これも自分の正しさを証明したいがゆえのことなのです。
子どもへの影響
家事や子育ては母親ひとりではできません。父親の協力なくして、それらはできません。
よって機能不全家族の母親の心労は多大なものでしょう。母親は鬱屈し、それを理解してくれる人はおらず、不安と孤独にさいなまれるでしょう。
そして夫婦の仲は険悪になっていくでしょう。
そんな親たちの様子を、娘や息子をじっと見ています。
娘や息子は、親たちの不和を、いつも気にします。
子どもたちは、家庭内に波風が立たないように気を使います。
ある日、子どもが学校で悲しいことがあって、母親にそれを伝えると「お母さんも悲しいわ」と言うのです。
母親は、子どもの悲しみよりも、夫との不和による沈んだ心を癒したいのです。
子どもは自分の悲しみを抑えて、母親の悲しみを癒すために頑張ります。
いつしか母親は、自分自身の悲しみを子どもに癒してもらうことを求めました。
このようにして、機能不全家族における子どもは、父親に優しくしてもらえない母親を慰める役割を担ってしまうのです。
たとえ子どもが「学校で悲しいことがあった」ことを母親に聴いて欲しくても、まずは母親の悲しみを癒さないといけないのです。
つまり子どもの欲求は後回しにされる。まずは親の悲しみを癒すことが優先されるのです。
子どもは自分の気持ちを抑えて、まずは父親の無理解に苦しむ母親を支えなければなりません。
ここに機能不全家族の特徴があります。親の期待にこたえる役割を子どもは担わされ、そして自分の望みは親によって無視されるのです。
機能不全家族では、親の期待と要求を子どもが満たすことが優先されます。子どもの欲求は後回しにされます。
子どもの悲しみへの対処よりも、まずはお母さんの悲しみをなぐさめる役割をこどもが担うことを優先されるのです。
これが常態化すると、子どもはアダルトチルドレンになります。
こうして、機能不全家族からアダルトチルドレンが輩出されるのです。
父親の暴言・暴力が家族を縛りつける
親同士が喧嘩ばかりして、さらに暴言や暴力が家庭内にあるとしたら、あっという間に家族がバラバラになってしまうと思いますか?
いいえ、実際はその反対なのです。暴力や暴言によって家族の結びつきは強くなるのです。
たとえば長男は、母親が父親に虐待されていることに怖れをもっていて、そのために家族に縛られています。
父親は、息子の悪いところや欠点を探して指摘することに夢中になることで、息子を縛りつけます。
息子は怖いお父さんを怖れて、身動きが取れなくなっています。
長女は、お父さんに暴力をふるわれている弟を思うと、怖くなって家族の暴力問題にしばりつけられます。
こうして家族は、暴力・暴言を通じておたがいを縛りつけ合うのです。これが機能不全家族の特徴なのです。
暴力や暴言は悪いことです。あってはならないことです。
自分で家族を作っておきながら、家族を虐めるのは、むちゃくちゃなのです。
しかし家庭内の暴言・暴力に慣れてしまうと、それらによる被害を認めようとしないのです。ここに暴力・暴言の恐ろしさがあります。
ある相談者の女性は、夫からの暴言に悩んでいました。夫は怒り出すと止まらないのです。
けれど「私さえ我慢すればいいんだ」と、女性は言われました。我慢できないくらいの暴言にも関わらず、何事もないように女性はふるまってきたのです。
おまけに家庭内で起きていることは、外部に知らされないばかりか、秘密にされてしまいます。
ですから父親の暴力や暴言によって、いつまでも家族は苦しむことになります。
しかし男性中心社会のこの国では、夫に暴力や暴言をふるわれている妻に対して「妻にも原因があるのでないか」という言説がまかりとおっています。けれどそんな言説は、まったくのでたらめです。
DV防止法(配偶者暴力防止法)ができてからは、DVの被害者には被害を受けるいわれは存在しないことになっています。
家族から暴言・暴力を受けるいわれは、まったくないことを覚えておいてください。
言葉で家族をコントロールする父親
私の父親は大人ではありませんでした。
大人のとしての責任を果たすことをしませんでした。
私の父親は、自分の母の入院・葬儀、死後の実家の処分、自分の転職活動・子どもの教育・・・などを、まったくやらない人でした。
「どうするのよ? お父さん」と、私が問題に対処しない父親に言うと、決まって父は怒りながらこういうのでした。
「刑務所に行けばいいんだろ!」
「死んでやる!」
・・・もうむちゃくちゃなのです。
こうして家族から詰め寄られると「俺なんか死ねばいいんだろ」「会社なんかやめてやる」と言う父親と言うのは多いものです。
なぜ、こんなことを言うのでしょう。
それは家族を脅しているのです。
「働かないぞ。金を入れないぞ」と、ほのめかすことで家族を脅迫しているのです。
「そうか。悪かった。俺は父親失格だな。もう俺はいない方がいいな。会社も辞める。そしてひとりで暮らすよ。そして死んでしまった方がいいかもな」と、たとえ優しい口調で話したとしても、それは脅しが目的なのです。
つまり、「俺が会社を辞めると困るだろう?」「俺が死ねば、おまえら後悔するだろう?」という脅迫が、この言葉の裏にはあるのです。
そうやって家族を言葉でコントロールする父親は少なくないのです。
このような父親の家族に対する支配欲求とは、ハラスメントであるといえます。
父親の家族へのハラスメントは、害悪以外のなにものでもありません。
父親の家族への支配によって、その家族は機能不全に至るのは言うまでもありません。
もし、あなたが機能不全家族で育ったことで悩みをかかえているのでしたら、ご相談に応じます。
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● 機能不全家族の特徴について、もっと知りたい方は、こちらのページをお読みください。
米国催眠士協会認定ヒプノセラピスト
わたなべいさお
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