自己肯定感が低いことに、お悩みの方に向けて、この文章をお届けします。
まずは、初めにお伝えしたいことがあります。
それは、自己肯定感が高い人であっても、状況によっては簡単に下がってしまうということです。
たとえ「メンタルが強い人」でも、置かれている状況によっては、自己肯定感は下ってしまうものです。
自己肯定感とは、自分と周囲との関係によって、下ったり上がったりするからです。
自己肯定感が低いのは、あなたの「メンタル」に問題があるのではないのです。
「メンタル強化」を目指す書籍が、本屋さんにたくさん並んでいますよね。
けれど、その「メンタル」にしても、自分と周囲との関係によって、たやすく変動します。
いくら自分自身の心を鍛えても「自分と他人」「自分と周囲の状況」との関係によっては、「ああ、私はなんてダメなんだ」と自信を失うものです。
最近の女性誌の表紙には「整う」というキーワードが踊っていますよね。
けれど、自分の心身を「整えている人」でさえ、しんどい職場に身を置いているだけで「私って、なんのために生きているんだろう」と容易に自己肯定感は下ってしまうことでしょう。
心と頭をポジティブ・シンキングで満たしたとしても、人を人間として尊重しない環境に身を置けば、これまた自己を肯定的に見なすことは難しくなります。
メンタル強化、心身を整える、ポジティブシンキング、感謝の気持ちといった「自分の気持ち」で悪い状況を乗り切ろうとするのは、最近の流行りのようですね。
しかし、そうしたすべてを「心がけ次第」で克服しようとする考え方は、昔からある通俗道徳でしかありません。
道徳で、人は幸せにはなれません。
なぜなら自分のこころの内面とは、周囲からの影響をたえず受けているからです。
たとえば、人間を人間扱いしない劣悪な労働現場にいれば、誰だって自分のことを惨めに思えてくることでしょう。
どんなに一流のコメディアンであっても、客席に誰もいない舞台では、ポジティブにはなれないでしょう。
清く、正しく、美しい、感謝の心を持てば、事足りるわけではないのです。
心の状態は、周囲と自分との関係によって満たされたり、欠乏を強いられたりするものだからです。
周囲から、どんな言葉を聞かされ、どんな扱いを受けているかによって、あなたの自己評価は上がったり下がったりします。
あなたが低い自己肯定感に悩んでいるならば、自他との関係を検討する必要があります。
では、次からは、どんな周囲との関係によって自己肯定感は下ってしまうのか? 考えていきます。
しんどい状況がずっと続いている
「しんどい」状況に置かれると誰だって自己肯定感は下ってしまいます。
たとえば、職場で働いていて、自分への評価が著しく低いのであれば、自己評価を上げるのは難しいはずです。
長時間労働で、しんどくて、給料がとても低くいならば、自己を肯定的に見なすことは出来ないでしょう。
しんどくて、疲れていて、報われない気持ちを抱えていると、どうしても自己肯定感は低くなるはずです。
いつ終わるか分からない業務に、ずっと縛りつけられると、やがて人は意欲を失うでしょう。
子育てのしんどさを理解されない
たとえば、あなたは子育てをしていて、その大変さを誰からも認められず、いつも孤独のなかで試行錯誤をしていたら、意欲を失い、自己評価も下がってしまうでしょう。
子どもは精神的には「かけがえのない存在」でしょう。
しかし時間的・経済的には、そうは思えないことだってあるでしょう。
自分の時間を犠牲にして、無理を重ねながら子育てするならば、げんなりしてしまうのは当然あるでしょう。
さらに誰からも助けてもらえないなら、なおのことです。
自分の愛情だけで乗り切れるほど、子育てはたやすいものではありません。
孤独のなかで子育てに行き詰れば「母親として自分はどうなんだろう?」と、葛藤と罪悪感によって、自分を肯定するのは難しくなるでしょう。
親の問題
たとえば、あなたの親がなんらかの問題をかかえていたら、
そして、その問題解決のために、あなたは頑張ることを強いられていたら、自己を肯定するのは難しく思えるでしょう。
なぜなら報われない気持ちで心はいっぱいになるから。
問題をかかえた親というのは、娘や息子にとって、しんどい存在です。
さらに親の問題解決の肩代わりをさせられるならば、苦しみを味わうしかありません。
異性問題、飲酒問題、夫婦仲の悪さ、借金、ギャンブル、家庭内暴力、子離れしてくれない親、親の過干渉・・・親が作る問題というのは、子どもに良くない影響を与えます。
そして「親の問題」というのは、なかなか解決できません。
解決しようとしても、「問題の渦中」に巻き込まれて、そこから抜け出せない感じがします。
いつまでも問題が目の前にあるので、いくら親のために頑張っても、報われない想いがします。
そのために、いつも疲弊を味わる状況に置かれます。
自己肯定感は低くなるでしょう。
そうした問題を家族にまきちらしてきた親を、こんどは介護するならば、これは大変な苦痛を味わいます。
終わりの見えない介護ほど、頑張るほどに報われず、とてもしんどいものです。
「私の人生って、親のためにあるのか」「私はこれからも親のために頑張らないといけないのか」
と、やるせない気持ちになります。これでは自分の人生そのものが味気なく思えてきます。
とても自己を肯定的に思えなくなります。
目上の人、権威ある人からの否定的な言葉
学校の先生や先輩、上司といった目上の人や権威ある人から、頭ごなしに否定された経験は、あなたから自信を奪うかも知れません。
「お前は何をやってもダメだな」「情けない奴だ」「お前はできない人間だ」
こうした、あなたを頭ごなしに否定する言葉を、目上の人や権威のある人から聞かされてきたならば、誰だって自信を失うでしょう。
厄介なことに、こうした言葉は、いつまでも頭のなかに残っているものです。
そして今の自分を否定して苦しめるでしょう。
そればかりか、過度な努力に駆り立てるでしょう。
「お前はダメだ」と、教師や先輩から言われると、頑張って見返そうと思ってしまう。
その頑張りが上手くいかない時、「やっぱり私はダメだ」と自己否定感を強めてしまいます。
たとえ成果を上げてみても、周囲からの評価が期待通りのものでなければ、「まだまだ頑張りが足りない!」と自分を追い詰めることに。
あるいは「こんな程度で満足してはいけない」と、さらに頑張ってしまう。
このように、教師や先輩、上司といった目上の人、権威のある人からの評価を上げるために、ずっと頑張り続けてしまう人は少なくありません。
人からの低い評価を挽回したくて、過度な努力を重ねてしまう。
すると、心に余裕はなくなり、知らぬ間に疲れてしまいます。
何をやっても心は満たされず、報われない味気ない思いをさせられます。
ついには、自己を肯定的に見ることを難しくします。
いつも頑張っている。成果も出している。なのに自己評価が低いならば、、、
あるいは、いつも何かに駆り立てられて頑張ってしまうならば、、、
ひょっとして誰かの言葉が、あなたをいつまでもコントロールしているのかも知れません。
親の言葉
「お前なんか生むんじゃなかった」
「お前より、あの子の方がかわいい」
「ほんとうは男の子が欲しかったんだ」
「そんなことでは立派な人間になれないぞ」
・・・このような子どもの人格を否定する言葉を、親は言うことがあります。
「私の親は『お前なんか生むんじゃなかった』と言いました」と、大人になっても忘れずに覚えている人がいます。
そして、自己を肯定的に見なせずにいるのです。
子どもにとって親は絶対的な存在です。子どもは親から愛され、褒められたいものです。
そんな親から自分のことを否定する言葉を言われてきたならば、大人になってから「自信がもてない」ことで苦しむ場合があります。
あるいは、そんな親を見返すために、がむしゃらに頑張る人もいます。
教師や先輩のような目上の人、権威ある人、そして親から、頭ごなしに否定されるのは、自己肯定感を低める原因になります。
「内面」も大切だが「外側」も重要
このように、いかに自分のメンタルを強化してみても、周囲と自分との関係によって、自己肯定感は低くなるのです。
ここで大切なことを、お伝えします。
あなたを大切にしない状況、人間関係から離れましょう。
あなたを否定し、疲弊させ、人間として扱わない状況や人間関係こそ、あなたの自己肯定感を低くするのですから。
たとえ「低い自己肯定感」であっても、あなたを大切にしてくれる仲間と一緒に過ごすことができれば、あなたは自分を守ることができます。
失敗して落ち込んでも、あなたを人間として尊重する人間関係のなかで「失敗をする」なら、比較的に早く落胆から回復できるでしょう。
つまり良い人と、長く付き合うことは、自己肯定感を上げるために、とっても重要なのです。
誰を、自分の人間関係に招き入れるか。
自分はどんな人物と関係を築くか。
この「問い」に対する「答え」によって、あなたがどんな経験をするかが決まるでしょう。
自己を肯定できる経験か。否定してしまう経験か―。
つまり内面も大切ですが、外側はもっと重要なのです。
心理セラピスト
わたなべいさお
頑張っても自己肯定感が高くならないならば、次のページがお役に立ちます。
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