アダルトチルドレンとは、機能不全家族で育ったことで、人間関係で深い悩みを感じたり、生きづらさを覚えたりしてしまう方のことを言います。
機能不全家族については、こちらのページで詳しく説明していますので、あわせてお読み頂ければと思います。
さて、このような訴えを私は相談者の方からよく伺います。
「アダルトチルドレンの解消をテーマにした書籍を読んでみても、悩みが消えない」
それは、どうしてなのでしょうか?
その最大の理由を今回は書いてみたいと思います。
子ども時代における親たちとの関係によって、大人になってからも生きづらさを抱えたり、人間関係で躓いたりする方のために書かれた書籍があります。
そういった書籍をここでは「アダルトチルドレンの本」と呼んでみます。
アダルトチルドレンの本の底に流れる考えには、このようなものがあります。
「現在の苦痛は過去の体験にある」
つまりは過去と現在を結び付けることで、生きづらさの原因を探求していくという発想です。
ここで読者の多くは、本に描かれている事例を読むことで「私もそうだ」と思い当たるのです。
「私も同じく過去に本が事例としてあげているような体験をしてきた……だから現在の私はとても生きづらくて、苦痛を覚えるのだ」
といった具合に読者は本を読むことで過去が現在に暗い影を落としているというストーリーに染まってしまうのです。
すなわち過去が現在を決めているというストーリーです。
もちろん本には解決策が書かれています。
・自分の欲求やニーズを知ろう。
・自分の将来のゴールを思い描こう。
・心の痛みを感じたら、セルフケアをしましょう。
・自分をいたわるケアを身に着けよう。
・私と他人との境界線があることを知って、それを守ろう。
・喪失を癒すグリーフケアを実践しましょう。
・怒りという感情を受け止めるようにしましょう。
・相手への自分の意見を率直に主張できる自己表現の技術を身に付けましょう。
などなど、アダルトチルドレンが抱える課題への解決方法が解説されています。
どれもが、課題のために必要な取り組みの内容であることが理解できます。
しかし、どう思われますか?
これだけたくさんの「課題解決のために身に付けるべき内容」が本に書かれていても、「よし! やろう!」というやる気になれるでしょうか?
もしくは、一生懸命に取り組んでみても、途中でやめてしまった方もおられるでしょう。
もし、本に書かれている課題を克服するための方法を「読者ひとり」で成し遂げられたならば、本は役に立つと言えます。
しかし多くの読者は、本に書かれている解決方法をスムーズに着手できて、最後までやり遂げることが出来ていないのです。
つまりは読者ひとりでは、アダルトチルドレンの課題をクリアするのは難しいのです。
さらに、難しくさせているのが最初に述べた本の筋書き、ストーリーです。
アダルトチルドレンの本の論法である「現在の深い悩みの原因は過去の家庭内の体験によるものだ」というストーリー。
「過去が現在に影響を与えている。だから今、あなたは悩み苦しんでいるのです」という本のストーリーに染まってしまうと、どうなるでしょう。
「よし! 課題を克服しよう」という意欲が発揮できないのでは? と私は思うのです。
本を読むことで自分自身の過去の体験が思い出されてきます。
過去、親たちが自分のやったこと、言葉が記憶としてよみがえってきます。
ここで怒りや悲嘆にかられる読者は少なくないと想像できます。
親がやったこと、投げられた言葉に憤怒にかられる方もおられるでしょう。
いずれにしましても、本を読んで過去の自分の体験を思い出すことで、辛さが増すのです。
となれば、読者は過去に圧倒されてしまいます。
あまりにも自分の過去が重くのしかかるようで、重荷を背負わされた感じがして、とても克服に向けた意欲がでない。
もし、そうであるならばアダルトチルドレンの本をいくら読んでも「過去に打ちのめされる」だけであって、かえって悩みが深まってしまう。
「もう、どうすることも出来ないように感じる」と。
変えられない過去を前にして、自分がとても苦しく、悲しい存在に思えてしまうならば、思い悩みは深まるでしょう。
だからこそ、過去が現在に影響を与えているというストーリーに染まってしまってはいけないのです。
むしろ、過去の体験が現在の苦痛を作っているという「因果関係」を薄める必要があるのです。
もちろんアダルトチルドレンの本に書かれている悩み解決のための方法は良くないものではないでしょう。
しかしながら、それをやりこなすには意欲がいります。
そして、やり抜くには読者ひとりでは難しい。
機能不全家族の苦悩とは、ひとりで立ち向かうには過酷だからです。
過去が現在を決めているという本の筋書き。
この筋書きから抜け出して、別のストーリーの厚みを作っていくことが、もっとも必要なことなのです。
そうなれば「問題以外のストーリー」が人生のなかでメインになっていきます。
課題克服の意欲も高まります。
反対に「なんだ。今も昔も、いつだって私の人生って問題だらけだよね」という人生への悲嘆が深まれば、自分らしさが発揮できる人生の創造は難しくなります。
ですから「過去が現在を決めている」というストーリーから離れること。それが初めの第一歩なのです。
アダルトチルドレンの本が「私の人生は私を落胆させてばかりだ」という悲しみを読み手に増長させるならば、いくら読んでも悩みがすっきり晴れないのは当然でしょう。
機能不全家族の悩みを克服するための解決方法を検討しているページがあります。
ぜひ合わせてお読みください。
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