「どうして、ウチの母親はいつもこうなの!」
あなたは、このように母親との関係に苦しんでいますか?
「どうして口やかましいの」「どうして私のことに口出しをしてくるの」・・・そのような重たい母親にうんざりしていますか?
「ウチの母親って、どうしてこうなの?」という疑問に答えるためには、家族のスタイルについて知る必要があるのです。
なぜなら母親というのは家族を支える役割を強いられているからです。
この重たい役割ゆえに母親はしんどくなって、そのしんどさが家族関係に暗い影を落としてしまうのです。
ですからまずは、家族について語っていきたいと思います。
家族って何?
私たちが知っている家族というイメージは、ごく最近になって作られたものです。
明治時代になってから作られたのが現在の「家族」の形態なのです。
その「家族」とは、家長を他の家族が支えるというものです。
家長とは、主に父親のことです。その父親を支える役割を担ったのが、女性や子どもたちでした。
女性である母親が、家事を切り盛りしました。毎日の炊事や洗濯、子育てや姑・舅の介護までお母さんが担ったのです。
母親が家のことを切り盛りすることで、父親は家の外で働くことができたのです。つまり母親の役割はとても重いものでした。時代は変わりましたが、母親が家族を支えるというのは今も変わりはないでしょう。
現在では、専業主婦は少なくなり共働きが多いですよね。それでも家事・子育て・介護を主に担うのは「母親」ではないでしょうか。
子どもが巣立ってからの「母親」は、お祖母さんとして孫のお世話の役割を担います。
そのような「母親」が旦那さんである「父親」から愛され、日々の苦労を理解されていたら、「母親」の心労は少なくなるでしょう。しかし「母親」と「父親」の夫婦関係が悪ければ、どうなるでしょうか?
家族の基礎は夫婦関係にあります。その夫婦関係が悪くて、たとえば父親が働いてばかりで一切の家事・子育て・介護を手伝わないとか、家庭内の問題にまったく関心を持たないならば、「母親」の心労はたいへんなものになります。
あるいは夫婦関係のなかに女性問題があったり、アルコール依存・暴力・ギャンブル依存・借金などといった問題を父親が抱えていたら、なおのこと「母親」の苦労は大きくなるでしょう。
そんな大きな心労やストレスをかかえた「母親」が誰にも理解されなければ、「母親」はいつもイライラしたり、悲しみにひたってしまうことでしょう。
そんな「母親」を支える役目を、娘や息子が担う場合があります。
家族・夫婦問題のせいで心労を抱えている「母親」を、子どもである「あなた」が支えていたら・・・あなたにも心労が及んでいたのではないでしょうか?
「母親」のしんどさを、いつもあなたが癒したり、なぐさめていたら、あなたの気疲れは大きいものだったはずです。
もし、あなたがお母さんとの関係で悩んでいたら、今まで述べてきたような明治時代以降の「近代家族のスタイル」が悩みの背景にあったのです。
さらに家族の機能が不全状態であれば、あなたの家族の悩みは深いものだったと思います。
機能不全家族とは?
次に機能不全家族とは? についてお話をしていきます。
機能不全家族の特徴について、かんたんに説明すると、こうなります。
- 「子どもの欲求を満たすことは、いつも後回しにされる」
- 「子どもは、親の期待と要求を満たす役割を担わされる」
- 「親たちの期待と欲求を満たすことが優先される」
機能不全家族では、こんな光景がよく見られます。
子どもが母親に「今日は、学校で悲しいことがあった」と言うと、母親は「お母さんも悲しいわ」と夫婦の不満を子どもに打ち明けるのです。
すると子どもは悲しんでいる母親をなぐさめるのです。そして子どもが学校であった悲しい出来事は放置されるのです。
つまり機能不全家族では、母親の悲しみを癒してからでないと、子どもの悲しみは母親に聞いてもらえないのです。
子どもは親のご機嫌を取らないといけない。嘆き悲しむお母さんをなぐさめないといけない・・・。そして「遊びたい」「かわいがって欲しい」といった願いは叶えられず我慢を強いられるのが機能不全家族の子どもたちの姿なのです。
ここで考えて欲しいことがあります。
もしも母親が、心に痛みを抱え、生きづらさを抱えている人だったら・・・子どもは、どうなるでしょう?
そうです。子どもは大変です。母親のケアのために、頑張らないといけないから。
「子どもに自分の悲しみを癒してもらたい」という母親の期待と要求に応えるために、子どもは必死にならないといけません。ならば、子どもが抱える問題は、いつも後回しになります。ということは、子どもが健全に育つ環境を親は与えることができないので、機能不全家族が進行してしまうのです。
「家事仕事の心労を理解されない辛さ」「夫婦関係の悪さ」「家族・親戚の問題」のせいで苦しむ母親をケアするのは、娘・息子たちです。そうなれば「あなた」と「母親」という親子関係はとても息苦しいものになるでしょう。
とりわけ機能不全家族の「父親」というのは家の事に無関心です。たとえ母親と娘・息子がもめて喧嘩をしていても「父親」は関わることをしないものです。
娘・息子が問題を起こして母親が頭を悩ませていても、「子育ては、お前に任せている」と言い切り、問題から逃げるのが「父親」です。
仕事をして稼いでいるからそれでいいだろ・・・これが機能不全家族の父親に多いタイプです。まさに釣った魚に餌をやらないのです。
いくら妻が子育て・家事などに悩んでいても、旦那の方は関心を寄せないので、母親のしんどさは深まるばかりです。
そんな母親のしんどさをケアする役目を娘・息子が担うならば「母娘関係」や「母息子関係」は、こじれるでしょう。
父親(旦那)の悪口・愚痴を娘・息子に母親が吐き続ける。それをじっと聞かなければならないならば、母親と娘・息子の関係は悪化するでしょう。
女性という不利益
我が国は男性中心の社会です。ですから賃金格差や就職・社会進出において「女性」は不利益をこうむっています。
それゆえに女性は生きづらさを抱えやすいのです。女性としての生きづらさを抱えた女性が母親になるのです。
生きるのに苦しみを感じている女性=母親が「家族」を支える役割を担わされるのです。旦那の世話、家事、育児、介護などといった「家族のケア」を担わされるのです。
こうした家族のケアは終わりがありません。さらに家族の面倒は、女性がやって当たり前と思われているので、ねぎらわれることが少なく、女性=母親の心労は多大なものです。
そんな母親の心労を癒し、ケアする役割を娘・息子が担うならば、子どもたちの心理的負担は大きくなります。
生きづらさをかかえた母親。
そんな彼女を支える娘・息子。
母親が結婚生活に不満を持っていればなおのこと、娘・息子の負担は大きくなります。
そして「母親―娘」「母親―息子」といった親子関係は、こじれて息苦しいものになるのです。
家長(父親・男性)を女性・子どもが支えるという「家族の背景」があります。
この社会において女性が差別されているという実情があります。
これら2つのことを考えただけでも、家族がおかしくなっても当然ではないでしょうか?
女性のなかには、こんなふうに思っている方は結構いらっしゃいます。
- 「女は損だ」
- 「私は女に産まれたくなかった」
- 「男に産まれたかった」
なぜ、そう思うのでしょう。それはこの国が、男性中心の社会である女性に対して「性の役割分業」を押し付けてきたからです。
なので、女性として生きるのは不自由なことであり、「男に産まれたかった」「女は損だ」という言葉は、社会によって言わされた言葉なのです。
ひとりの人間に対して「性の役割分業」を押し付けるのは、まさに差別です。ひとりの人間として尊重していないのですから。
家庭のなかで「女らしさ」「母親らしさ」を女性に要請するのは、人間の平等に反します。
こうして女性は、差別を受けてきたのですから、この国では、女性であることは痛みをともなうのです。
私の母親の口癖に、「女は損だ」「男に産まれたかった」がありました。
女性である自分自身を嫌悪する母親でした。
それなのに、人一倍に母親という役割をまっとうした人でした。
女であることを嫌いながら「母親」をやるのです。
それだからこそ、私に母親の心労は多大なものでした。
おまけに、母親は機能不全家族で育った人でした。
つまり母親は、親からケアをされずに生きてきたのです。
しかし結婚して子を産んでからは、家庭の切り盛りをしなければいけません。母親のことを旦那(私の父です)が気遣えばいいのですが、そうはいきませんでした。
父親もまたアルコール依存症という問題をかかえた機能不全家族で育ちました。ですから父親は、家族というものを知らない人でした。
父親は、仕事ばかりして休みの日はずっと寝ている人でした。母親の嘆きを無視する人でした。ときにはお酒を飲んでは暴れる人でした。
当然ながら、母親はいつもイライラしていました。
両親は毎日、喧嘩をしていました。安らぎも楽しみもない味気ない家族でした。
母親がどうしてイライラしていて、家族に安らぎがなかったのかを今ならわかるのです。
それは、母親が女性だということで我慢を強いられてきたからであって、母親が悪いわけではなかったのです。
機能不全家族の「母親」の特徴
ではここで、機能不全家族における「母親」の特徴を見てみます。
機能不全家族の「母親」のタイプには、こんなものがあります。
- 母子の役割が逆転している
- 強い被害者意識
- 子どもに依存している(母娘共依存)
- 二重拘束(ダブルバインド)
- 過干渉
- ネグレクト
こうしたことをする人に、ある共通点が見えてきませんか?
それは「女性である自分」を幸せに思えない人だからこそ、上記にあげたことをやってしまうのです。
もしも「ひとりの個人として」「女性として」生きることで幸せになれる社会であるならば・・・お母さんはもっと気楽に生きることができて、娘・息子に干渉することもなくなると思うのです。
それでは、機能不全家族の母親の各タイプについて、見ていきましょう。
母子の役割が逆転している
「母子の役割が逆転している」のは、女性として癒されない自分を子どもにケアしてもらいたいがゆえです。
子どもが母親の心の痛みをケアすることで、親子関係は逆転してしまいます。
ある相談者さんの母親は、娘を産んだ瞬間、「私に母親ができた!」と叫んだそうです。自分が産んだ娘を「自分の母親代わり」にしたいからです。
母親の思惑通り、娘さんはお母さんの「母親」として生きることを強いられたのです。母親は娘さんに依存することで、親子関係は逆転したのです。
強い被害者意識
「強い被害者意識」・・・女性として生きることに苦痛を感じていたなら、お母さんは被害者意識をもってしまうでしょう。
さらに旦那さんから理解されず、ひとり孤独になって家事や子育てをしなければいけないお母さんは「私の人生は辛い」と、被害者意識を強めてしまうでしょう。
そしてなかには、被害者意識という痛みを、自分の子どもに癒してもらうならば、娘・息子はお母さんの悲しみをかかえこんでしまうでしょう。
子どもに依存している
「子どもに依存している(母娘共依存)」は、どうして起きるのでしょうか。
女性としての痛みを埋め合わせるために、母親が子どもに依存するからです。
自分の娘に依存することで、お母さんは自分自身の痛みを忘れられるからです。けれど子どもは母親の苦しみをかかえこんでしまう。そして「ああ、人生って辛いものなんだ」と娘・息子は思い込んでしまうでしょう。
つまり母親が子どもに依存することで、子どもの人生にネガティブな影響をもたらすのです。
二重拘束(ダブルバインド)
「二重拘束(ダブルバインド)」とは、なんでしょうか。
たとえば「あなたの好きなようにしなさい」と言いながら、顔は怒っている・・・これがダブルバインドです。
怒りながら「好きなようにしなさい」と言われた子どもは、どうすればいいか分からなくなり、身動きがとれなくなります。つまり拘束状態に子どもは置かれるのです。
そういうダブルバインドによって、子どもは親にコントロールされるのです。親は子どもをコントロールすることで、自分の思い通りにすることができます。
今まで述べてきた通り、女性=母親というのは社会で、家庭内で支配されてきました。
上から下へ流れるのが支配というものです。ですから男性から女性へ支配は注がれます。そして時として、女性=母親はさらに下位にある子どもたちへと支配を流していきます。
私の家庭もそうでしたが、母親がわけもなく私に厳しかったです。何時間も折檻されたこともありました。その母親は社会から、旦那から支配されていたのです。
過干渉
「過干渉」とは親が、子どもがやることに口やかましく、干渉することです。とりわけ同性である娘に、母親はこんなことを言うものです。
「そんな人と結婚したら不幸になるよ」
「女も手に職をつけなさい」
「女も仕事ができないとダメだよ」
「結婚をして早く孫の顔を見せてね」
このように、娘の人生に母親はどうして口を出すのでしょうか?
それは自分自身が女性としての痛みを感じて生きていたからです。
だからこそ、同じ女性である自分の娘の生き方に、口やかましく言ってしまうのです。
「お父さんみたいな人と結婚してはいけない」といった具合に。
娘は自分と同じ女性だからこそ、娘の生き方に母親はひどく干渉するのです。
ネグレクト
「ネグレクト」とは、親が子どもを養育しない、必要なものを与えないことを意味します。
自分自身が親からケアをされたことがない人間は、自分の子どもを養育することは難しいのです。なぜなら人はやってもらったことしか、人にやってあげられないからです。
親にやってもらえてないことを、自分が親になった時、子どもにやってあげるのは難しいのです。
子どもを養育しない、必要なものを与えない母親を、私は責めることはしたくないのは、そういう事情があるからです。
ネグレクトをする母親とは、自分が子どもだった頃、親から大切にされなかったかも知れません。母親の生い立ちは、娘・息子に大きな影響をもたらすのです。
「母親」は変わらない
なぜウチの母親は重たくてしんどいのか。それは今まで述べてきましたように、母親の背景に「女性を生きづらくさせる文化・価値観」があるからです。
さて、あなたは「良妻賢母」という言葉を聞いてことがありますか。
「良妻賢母」ほど、男性中心社会から、にじみでた言葉もないでしょう。
この国は男性中心の社会であり、外へ出て働く男性を支える役割を女性にやらせてきました。
そして「良妻賢母」というイメージを女性に押し付けてきました。
「旦那から見て魅力的な女性であり、なおかつ賢いお母さん」こそが女の理想だと、この国の社会は女性たちに刷り込んできたのです。
私たちの世代の母親にとって、良妻賢母は自明でした。
つまり私たちの母親は、生き方までも「男性の都合の良いように」固定化されてきたのです。
もしあなたが娘として母親との関係に苦悩していて「重たくてしんどい母親」にうんざりしているのでしたら、、、
そんな「母親」の背景には今まで述べてきた女性としての桎梏=不自由さがあるのです。
ということは、母親を変えることは、とても難しい。
この国の文化・価値観を根底からひっくり返さない限り、母親は変わらないから。
よって、母親を変えるのではなくて、自分自身の生き方を見直すことをやっていく道を選びませんか?
自分に向き合うしかない
「女性とはこういうものだ」
「母親とはこういうものだ」
・・・このような女性・母親に投げつけられるメッセージがあります。
そのメッセージが女性・母親を縛ってきたのです。
そうした縛りつけは、女性・母親を苦しめてきました。
そして家族にも暗い影を落としたのです。
母と娘の関係を重たくさせたのです。
では、自分の母親を変えるには、どうすればいいでしょうか?
母親を変えるためには、母親の親を、そのまた上の世代の親を変える必要があります。
下流を変えるには、上流を変えないといけませんからね。
しかし、そんなの無理ですよね。
過去を変えるのはできないから。
会ったこともない上の世代の「親」を変えることなんて出来ない。
だからこそ、母娘関係をいったん脇に置いて、あなたご自身の生き方を見つめませんか?
あなたのなかの「女性というのはこんなものだ」を見直しませんか?
「私は私でいいんだ」って思える生き方を手に入れませんか?
そのためのお手伝いなら、私は力を惜しみません。
私はあなたが自由に生きられるために、セラピーを提供しています。
セラピーについては、こちらのページをお読みください。
米国催眠士協会認定ヒプノセラピスト
わたなべいさお
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